小規模企業景気動向調査
令和5年度7月期調査
~観光需要が拡大するも、酷暑や災害に阻まれ持続的な回復はまだ遠い小規模企業景況~
2023年9月4日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2023年7月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 観光需要が拡大するも、酷暑や災害に阻まれ持続的な回復はまだ小規模企業景況
7月期の産業全体の業況は、売上額DIが小幅に改善、資金繰り・業況DIはわずかに悪化した。夏休みシーズンのレジャー需要や、自粛されていたイベントの活発化が売上改善に繋がったが、猛暑や豪雨の影響で期待以上に客足は伸びていない。一方でコスト高や、従業員不足による受注機会のロス、ゼロゼロ融資の元金返済開始により資金繰りが立ち行かず、廃業を選択する事業者が増加傾向にある。
<製造業> コスト高に加えて、人手不足で機会ロスが続く製造業
製造業は、イベント需要から売上額DIが小幅に改善したが、採算・資金繰りDIが小幅に悪化。食料品関連は、資金繰りが大幅に悪化し、採算DIも2桁ポイント悪化した。気候変動による仕入れ値や、包装品の高騰が続き、価格転嫁でも対応できない程になっている。繊維関連は価格転嫁が進み、売上額DIが大幅に改善、採算DIが小幅に改善。機械・金属関連は、売上額DIが大幅に改善、採算・業況DIが小幅に悪化した。受注は増加傾向だが、人手不足での機会ロスや、半導体等の調達が不安定となっている。
<建設業> 猛暑や災害による特需が発生しつつも、課題の多さに苦しめられる建設業
建設業は、売上額・採算・業況DIがわずかに改善した。猛暑からエアコン工事やリフォーム受注が増加、豪雨災害の復興特需も発生した。一方、天候不良で工事の中断が続いたことによる工期延長や、復旧工事に人員が分散されることで人手不足が加速する等の問題も発生している。また業界全体が抱える課題として、労働法制の遵守から、工事条件は従来同様で労働時間のみ削減となり、下請事業者へのしわ寄せが発生している、とのコメントがあった。
<小売業> 概ね改善傾向を維持するも、業種により影響の異なる小売業
小売業は、売上額DIがわずかに改善したが、業況DIが小幅に悪化、資金繰りDIは大幅に悪化した。価格転嫁だけではコスト高を吸収できず、採算・資金繰りの厳しい状態が続く。衣料品関連は、業況DIがわずかに改善したが、秋物の動きが鈍く、売上額・資金繰りDIが小幅に悪化。食料品関連は、売上額DIが小幅に改善、資金繰りDIは大幅に悪化した。顧客単価は上昇しているが、買い上げ点数は伸びていない、とのコメントがあった。耐久消費財関連は、売上額DIが大幅に改善し、業況DIは大幅に悪化した。省エネ家電の売れ行きが好調ではあるが、仕入れ値の高騰は続いている。
<サービス業>外出需要への期待が高まるが、業種格差のあるサービス業
サービス業は、売上額・資金繰りDIがわずかに改善、採算DIが小幅に改善したが、業況DIは小幅に悪化。旅館関連は、夏休みシーズンの国内外での需要が高まり、全DIが改善したが、人手不足から稼働制限が続いている。また、災害が発生した地域ではキャンセルが相次いだ。クリーニング関連は、採算DIがわずかに改善したが、季節的に閑散期にあたることから、業況DIは大幅に悪化した。理・美容関連は外出需要の効果が大きく、全DIが改善し、特に資金繰りDIは大幅に改善した。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課