小規模企業景気動向調査
令和2年9月期調査
~全業種で4ヶ月連続の改善も、未だ本格的な回復には程遠い小規模企業景況~
2020年10月28日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2020年9月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 全業種で4ヶ月連続の改善も、未だ本格的な回復には程遠い小規模企業景況
9月期の小規模企業の業況DIは、全業種で4ヶ月連続の改善となり、特に、回復が遅れていたサービス業については、各種景気刺激策やGoToキャンペーンの利用で観光需要に回復の兆しが見られ、全DIが10pt以上改善し、緊急事態宣言前の3月期を上回る水準に回復した。しかし、全業種とも水準は未だにコロナ禍以前には戻らず、回復には程遠い状況である。経営指導員からは、生活様式や企業活動が劇的な変化に直面している中、変化に対応できている事業者と対応に苦慮している事業者との間で、回復に差がでているとのコメントがあった。
<製造業> 自動車関連で明るい動きがあるも、力強さに欠ける製造業
製造業は、4ヶ月連続で全DIが5pt以上の改善となった。機械・金属関連は大手自動車メーカーの生産が回復してきたため、受注が増え、売上増加傾向にあるとの声があった。繊維関連は、一部で新型コロナウイルス感染症のための布製マスクや医療用防護服等の売上は拡大傾向にあるが、展示会の中止や催事販売を再開しても客足が鈍い等、全体的には厳しい状況が続いている。食料品関連は、先月と同様、需要分野が内食向けか外食向けによって回復度合いに大きな差が見られるとのコメントがあった。
<建設業> 回復基調が加速も、今後に不安が残る建設業
建設業は4ヶ月連続で全DIが改善した。業況DIの改善幅は、緊急事態宣言後最大となった。公共工事については、引き続き堅調であるとの声が多く聞かれた。また、民需の住宅関連でも、新規着工やリフォーム等で延期していた工事が動きつつあり、加えて、資材不足も解消されつつあるため、復調の兆しがある。しかし、昨年ほどの工事量は確保できていない事業者も多く、また、消費者心理や投資意欲が冷え込んでいるため、今後の経済状況が不透明であることから、先行きを懸念するコメントが目立った。
<小売業> 消費意欲が鈍く、小幅な回復にとどまった小売業
小売業は、全業種の中で唯一資金繰りDIがマイナスとなり、他のDIは小幅な改善にとどまった。耐久消費材関連は、景気刺激策の効果もあり、先月ほどではないが、好調を維持している。食料品関連は、内食需要は堅調であるが、天候不順による野菜の不作や鮮魚の不漁による価格の高騰等、伸び悩んだ。衣料品関連は、景気刺激策の効果もあり、人の動きは出てきたが、未だ外出自粛傾向は根強く、また、猛暑の影響で秋物の動きが悪く、資金繰りが悪化している。全般的には、消費意欲が鈍いとのコメントが目立った。
<サービス業> 宿泊業・理美容業を中心に大幅な改善となったサービス業
サービス業は、全DIで4ヶ月連続で改善し、緊急事態宣言前の3月期の水準を超えた。理美容業については、外出への抵抗が薄れ、顧客が戻りつつあるとのコメントが目立った。宿泊業は、GoToキャンペーン等の効果により、宿泊客や予約が増加し、稼働率が上昇している。また、それに伴い宿泊関連の洗濯業も回復基調にある。一方、高級宿泊施設に需要が集中し、低価格な施設や団体客・インバウンド向けの施設は厳しい状況が続いているとの声もあった。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課