小規模企業景気動向調査
令和3年3月期調査
~2ヶ月連続で全業種が改善も、先行き不透明な小規模企業景況~
2021年4月28日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2021年3月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 2ヶ月連続で全業種が改善も、先行き不透明な小規模企業景況
3月期の小規模企業の景況DIは、全業種で2ヶ月連続の改善となり、昨年2月期の水準を上回った。3月21日の首都圏をもって、すべての都道府県で緊急事態宣言が解除されたこともあり、徐々にではあるが各業種で需要が戻りつつあること、新しい生活様式に対応したサービスの提供により好調な事業者もいることもあり、全業種での回復につながった。しかし、大都市圏以外においても感染が急拡大し、第4波を懸念する声が多い一方、4月以降高齢者のワクチン接種が始まることを期待する声もあり、期待と不安が交錯するコメントが目立った。
<製造業>回復基調が加速も、懸念材料が残る製造業
製造業は、全 DI が2 ヶ月連続で改善し、売上額・業況DIは10ptを超える改善となった。食料品関連は、引き続き巣ごもり需要が堅調であり、1月の緊急事態宣言前の水準に回復したが、原材料の原価高騰や販売先の飲食店の需要減退など不安要素も多い。機械・金属関連は、自動車関連全般や金属加工の一部の受注増により好調で大幅に改善したが、一方でコロナ禍において国内外の需要停滞や生産調整は続いており、今後に懸念が残る。繊維関連は、緊急事態宣言が解除されたこともあり、夏物などの需要が戻りつつあることから大幅に回復したが、生産調整や販促のためのイベントの中止等により厳しい状況が続いている。
<建設業> 全般的な回復基調の中、小幅な改善にとどまった建設業
建設業は、業況DIが小幅に改善し、コロナ禍が本格化する前の昨年2月の水準に回復したが、資金繰りDIはわずかに悪化した。他の3業種が大幅に改善する中、小幅にとどまった。一部地域では、除雪や災害復旧工事の需要で好調を維持している。また、民需でも、修繕工事やリフォーム工事が好調である。しかし、公共工事が徐々に減少していることや、人手不足や資材不足等で工期の遅れが発生し、資金繰りに影響が出ており、先行き不安との声が多く見られた。
<小売業>2ヶ月連続で大幅な改善も、力強さに欠ける小売業
小売業は、全 DI が2ヶ月連続で改善し、昨年1月期に迫る水準となった。食料品関連は、巣ごもり需要が堅調であった。また、年度末で売上が伸びたとの声もあった。衣料品関連は、卒業・入学・入社シーズンが続くことから好調に推移しており、大幅な回復となったものの、外出を控えるなどで購買意欲が落ちているとの声が多く、今後も予断を許さない。耐久消費材関連は、ウイルス対策関連商品に加え、新生活に向けた需要の増加により、回復傾向にある。
<サービス業> 2ヶ月連続の大幅な改善も、本格的な回復には程遠いサービス業
サービス業は、全DIが2ヶ月連続で大幅に改善した。理美容業は、卒業式シーズンを迎え、今まで来店を控えていた顧客の利用があるなど回復傾向にある。宿泊業は、一部地域ではビジネス関連の利用や、緊急事態宣言解除の効果もあり、若干回復したが、依然として低い稼働率が続いている。飲食業は、来店者数の少ない状況が続いており、洗濯業も、昨年よりも客足が戻ってきて大幅に改善しているものの、厳しい状況が続いているとの声が多かった。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課