小規模企業景気動向調査
令和3年8月期調査
~緊急事態宣言等の延長・適用範囲の拡大を受け、全業種で悪化となった小規模企業景況~
2021年9月28日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2021年8月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 緊急事態宣言等の延長・適用範囲の拡大を受け、全業種で悪化となった小規模企業景況
8月期の小規模企業の業況DIは、1月期以来7ヶ月ぶりに大幅な悪化となり、3月期の水準まで後退した。また、全業種の全てのDIも悪化となった。緊急事態宣言の延長や適用範囲拡大による経済活動の縮小が、全業種に深刻な影響を与えている。各種景気刺激策等により現状をしのいでいるが、いまだに厳しい状況が続いている。また、オリンピック・パラリンピックの開催の影響やお盆の帰省による今後の感染の状況など、先行きを不安視するコメントが目立った。
<製造業>回復基調から一転し、大幅な悪化に転じた製造業
製造業は、全DIが大幅な悪化となった。食料品関連は、繁忙期であるお盆前後に天候不順等の影響で仕入れ値が高騰したのに加え、イベントの中止、消費者の外出自粛や帰省の中止などで需要が減少し売上が低迷した。繊維業の一部では、一時的な反動により前年度より受注は伸びたが、先行きは不透明であるとのコメントがあった。また、機械金属関連は一部で自動車部品を製造している企業は好調とのコメントがあるが、原材料の価格高騰や確保難により、生産性が低調気味であるとのコメントが目立った。
<建設業> ウッドショック等の価格高騰や資材調達難に苦しむ建設業
建設業は、全DIが悪化となり、特に売上額DIは大幅な悪化となった。前月に引き続き、ウッドショック等による仕入れ価格高騰や資材不足の影響がいまだに改善されず、業況悪化に拍車をかけている。土木工事関連では、相次ぐ災害の影響等により、受注が増加傾向にあるが、慢性的な人手不足の問題もあり、現場管理に苦慮しているとの報告があった。建築関連の受注は、リフォーム需要が好調なものの、資材の高騰や不足により、採算に苦慮しているとの声があった。
<小売業>需要減退により、軒並み悪化となった小売業
小売業は、全DIが大幅な悪化となり、特に業況DIと採算DIは10ptを超える悪化となった。一部地域では、行政がプレミアム商品券の発行や、キャッシュレス導入の還元事業を実施することで消費者購買意欲が促進され、売上増加に繋がったとのコメントがあった。食料品関連では、内食向けは巣ごもり需要により引き続き堅調であるが、飲食店の更なる需要減退や天候不順等による仕入価格の高騰により、大幅な悪化に転じた。また、衣料品関連は、外出自粛に伴い需要は著しく低迷し、売上減少に大きく影響している。同様に耐久消費財関連も回復が見込めないとのコメントがあった。
<サービス業> 緊急事態宣言延長・範囲拡大の影響で、更に厳しい状況に陥ったサービス業
サービス業は、全DIが大幅な悪化となった。悪化幅は資金繰りDI以外は10ptを超え、特に売上額DIは▲16.4ptとなり状況の深刻さを示している。飲食業では、酒類の提供ができないため売上回復の見通しが立たないとの声が多くあった。宿泊業は、本来なら観光シーズンであるが、緊急事態宣言等の地域拡大により、宿泊支援策の中止や域外利用者が減少したこと、また、昨年はGOTOキャンペーンがあったこともあり、対前年比で非常に厳しい状況となっている。洗濯業ではコロナ禍のため、制服等のビジネス需要や浴衣等の季節需要が減少しているというコメントが目立った。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課