小規模企業景気動向調査
令和3年11月期調査
~コロナ禍以前の水準に戻るも、仕入価格高騰など厳しい状況が続く小規模企業景況~
2021年12月24日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2021年11月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> コロナ禍以前の水準に戻るも、仕入価格高騰など厳しい状況が続く小規模企業景況
11月期の小規模企業の業況DIは、採算DI以外は小幅な改善となる一方、採算DIは小幅な悪化となった。業況DIはコロナ禍前の2020年1月期の水準を上回るまで改善したが、あくまでも前年対比であることは留意するべきである。第6波に懸念する声や、原材料高などによる仕入れ価格の上昇が、経営を圧迫の兆候が見られているとの声が多数あった。また、半導体不足やウッドショック等による建築資材の不足といった影響が、製造業や建設業を中心に、なお悪影響を及ぼしており、一定数の事業者が苦慮している。
<製造業> 受注は好調も、半導体や原材料不足の影響で、採算が悪化している製造業
製造業は、業況DIは小幅な改善となり、売上額・資金繰りDIはほぼ横ばいであったが、採算DIは大幅な悪化となった。食料品製造関連は売上は好調であるが、原材料高が続き、収支バランスを保つことに苦慮しているとの声が目立った。機械・金属関連は、半導体不足による影響を受け減産や生産停止となり、売上が大きく減少する事業所もいるとのコメントがあった。また、原材料高や原材料不足に苦しむ事業者は、売上はキープできても、利益が確保できない状況にあるとの指摘もあった。繊維関係は売上は好調も、燃料費高騰の影響で採算の確保に苦しむ事業者もいるとのコメントがあった。
<建設業> 材料の仕入価格高騰が続き、採算に苦しむ建設業
建設業は、5月期以来厳しい状況が続く採算DIが5pt近い悪化になった。採算DI以外はほぼ横ばいであった。前月から引き続き、年度末に向けた公共工事の発注やリフォーム需要、一部地域では冬季前の駆け込み工事や災害復旧工事により受注は好調との声があった。しかし、原材料や原油の高騰や資材や人材の不足の影響は続いており、採算は厳しく、また、来年も見通しが不明であるとのコメントが目立った。
<小売業> 若干上向も、仕入価格高騰等により懸念材料が絶えない小売業
小売業は、採算DI以外は小幅な改善となったが、採算DIは横ばいとなった。一部の地域では、行政が消費喚起策を実施したが、事業者間で効果の差が大きかったとのコメントもあるが、全体的には、昨年同時期の感染症拡大時期と比較すると回復は見せている。食料品関連は、仕入価格が高騰したが、小売価格に転嫁しにくく、採算が悪化している。衣料品関連は、消費者の動きは鈍化する一方で、ネット需要が大きく伸びており、顧客が戻ってこないとの声が目立った。耐久消費財関連は、品不足により機会損失が発生しているとのコメントがあった。
<サービス業> 3ヶ月連続で改善するも、燃料費等仕入価格高騰に不安が残るサービス業
サービス業は、売上額・業況DIは大幅な改善となり、採算・資金繰りDIは小幅な改善となった。また、全DIが産業全体のDIを上回った。宿泊業は、感染状況が好転したことや旅行支援策の効果もあり、回復傾向にあるものの、原油価格や原材料価格高騰の影響がある中で、料金改定をしないよう工夫し、どうにか戻りつつある客足を確保している状況とのコメントが目立った。洗濯業関連も、冬を迎えて燃料費高騰が採算悪化につながることを懸念する声があった。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課