小規模企業景気動向調査
令和3年12月期調査
~売上は改善傾向も、原材料等の高騰や資金繰り等課題の多い小規模企業景況~
2022年1月31日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2021年12月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 売上は改善傾向も、原材料等の高騰や資金繰り等課題の多い小規模企業景況
12月期の小規模企業の業況DIは、売上額DIが大幅、それ以外が小幅な改善となった。また、全業種共通して売上額DIが一桁台となった。経済活動の活発化に伴い、売上の回復基調が鮮明となる結果になった。ただし、前年対比という調査の特性上、業況DIはコロナ禍前の水準まで回復は見られるものの、実際には、原材料等の高騰によるコストの増加や、融資据置期間終了でコロナ関連融資の返済が開始となったなどの影響により、採算・資金繰りに苦慮する事業者が増えたとのコメントが目立った。また、変異株の感染拡大の影響に注視が必要であるとの声もあった。
<製造業> 食料品関連を中心に受注は好調も、採算に苦しみ利益は今一歩の製造業
製造業は、全DIが改善となった。特に売上額DIについては、大幅な改善となった。食料品関係は、歳末と巣ごもり需要により、売上や設備等の稼働状況は好調であるが、材料価格の上昇から、利益は不変であるとの声があった。繊維関係は、コロナの影響を受けて縫製業者の廃業が相次いだこともあり、県外からの発注が増えたが、職人不足から受注できる仕事が限定されてしまうとのコメントがあった。機械金属関連については、昨年と比較して受注の増減がない中、原材料高の影響で採算が悪化しているため、今後を不安視している事業者も多いとの声もあった。
<建設業> 原材料や燃料代の高騰により、価格転嫁や資金繰りに苦しむ建設業
建設業は、全DIが小幅な悪化となり、全DIが揃って悪化となったのは4ヶ月ぶりとなった。受注に関しては、公共需要や災害復旧工事は堅調、民間需要は低調も一部に住宅新築需要があるとの声があった。また、納入遅れが少しずつ解消されつつあり、住宅機器を使用する設備工事も稼働し始めてきている。しかし全体としては、原材料価格と燃料代の高騰が続いてているため、価格転嫁や資金繰りに苦慮する事業所が多いとのコメントが目立った。また、変異株による感染拡大の影響により資材が再度入荷されず、再び事業中断を余儀なくされる事態を懸念する声も目立った。
<小売業> 経済活性化と歳末需要で好調も、仕入価格高騰など不安要素が残る小売業
小売業では、売上額DIが10ptの回復となったのをはじめ、業況DIは大幅、採算・資金繰りDIは小幅に改善した。衣料品関係は、経済活動の活発化と季節需要が好調であるため、一部ではコロナ禍前まで回復に進んでいる声もあるが、一方で仕入れ面で苦慮し、売上の回復とは言えない事業者もある。食料品関係はコロナウイルス感染症の拡大が一時落ち着いたこともあり、イベント等の開催もされ始めていることから、回復基調に転じるも変異株への懸念が大きい。
<サービス業> 引き続き回復基調も、仕入価格高騰などで本格的な回復まで今一歩のサービス業
サービス業は、採算・資金繰りDIは大幅改善し、売上額・業況DIは小幅な改善となった。宿泊関連は、10月以来客足も戻っており、引続き売り上げは堅調。洗濯・理美容関連は、帰省客や行事も増えたことにより、来店客が増えてきているが、原油高の影響も継続しているため大幅な業況の改善には至っていない。飲食関連は、感染者数減少に伴い、業況は好転しているが、夜間の集客は低調であり、仕入価格高騰から、採算が悪化しているとのコメントが目立った。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課