小規模企業景気動向調査
令和4年6月期調査
~売上好調も、コスト増加分の価格転嫁に踏み切れず、採算・資金繰りに苦しむ小規模企業景況~
2022年7月28日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2022年6月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 売上好調も、コスト増加分の価格転嫁に踏み切れず、採算・資金繰りに苦しむ小規模企業景況
6月期の産業全体の業況は、売上額DIが小幅、採算DIがわずかな改善、資金繰り・業況DIは小幅な悪化となった。5月期に引き続き、主要4業種すべてで売上DIが改善した一方、資金繰りDIは悪化となった。ロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安等による原油及び原材料高騰に歯止めがかからず、コスト増から採算が悪化している中、顧客の買い控えを警戒し、価格転嫁に踏み切れず苦しんでいる。また、採算の悪化が資金繰りの悪化につながっているとのコメントも目立った。
<製造業> 受注は好調も、価格転嫁が進まず、採算・資金繰りに苦しむ製造業
製造業は、売上額DIが小幅に改善、資金繰り・業況DIが小幅な悪化となった。食料品関連は、催事・イベントの活発化により売上が増加し、5月期に続いてプラス水準となったが、小麦や油等の高騰が止まらず、価格転嫁が追い付かないとのコメントがあった。機械・金属業関連は、採算が引き続き低水準で推移する中、資金繰りもじわじわ悪化しており、経費増加分を価格転嫁できない下請企業の立場の弱さが出ているとの声があった。繊維業関連は売上DIが10pt超改善と受注は好調だが、原材料の入荷待ちで稼働率が低く、支出が先行し、資金繰りの悪化が見られる。
<建設業> 価格高騰による採算の悪化や資材の入手難による工期延長で、資金繰りに苦しむ建設業
建設業は、売上額DIが小幅に、業況DIがわずかに改善するも、資金繰り・採算DIは引き続き低水準で推移している。官公需の工事を中心に受注が堅調であるも、資材等の価格高騰が続く中、上昇分の価格転嫁が追い付かず、採算の悪化を招いている。また、建築資材が入手困難であることから、工期が延長し、人件費等のコストが増加している。加えて、工期延期で売上の入金が遅れ、資金繰りが悪化している事業者が増加しているとの声があった。
<小売業> 売上好調を維持も、価格転嫁に苦慮する小売業
小売業は、売上額・採算DIが改善するも、資金繰り・業況DIが悪化に転じた。衣料品関連は、売上DIが約10pt改善と好調も、顧客離れを恐れ、仕入価格上昇分を価格転嫁できずに、その他のDIは悪化となった。食料品関連は、売上額DIがプラス水準となるも、買い控えや顧客の流出を恐れ、価格転嫁に踏み込めずに資金繰りDIは直近1年間で最も悪化幅が大きく、水準も低い。耐久消費財関連は、自動車・エアコンなどの需要はあるものの、供給不足が慢性化しており、十分に対応できていない。
<サービス業> 価格高騰により、採算・資金繰りが厳しく、回復基調から悪化に転じたサービス業
サービス業は、5月の全DIの大幅改善から、引き続き売上DIは好調を維持するも、その他のDIは小幅な悪化となった。旅館関連は、大型連休以降客足が戻っているとの声があり、売上好調を維持しているが、採算・資金繰りは厳しくなってきている。クリーニング関連は、燃料費や溶剤関係の値上がりの影響を大きく受けているが、価格転嫁がなかなか困難であることから、業況・採算・資金繰りが大幅に悪化している。理美容業は、4ヶ月連続で売上DIが改善傾向を示し、原材料高騰の影響があるものの、全体的に安定してきているとのコメントがあった。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課