小規模企業景気動向調査
令和4年8月期調査
~業種で異なる需要格差、慢性的なコスト増による採算悪化に苦しむ小規模企業景況~
2022年9月30日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2022年8月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 業種で異なる需要格差、慢性的なコスト増による採算悪化に苦しむ小規模企業景況
8月期の産業全体の業況は、コロナ第7波の急拡大により売上額DIが2期連続で小幅に悪化、採算・資金繰り・業況DIが小幅な改善となった。一方で、業種によって売上額DIの改善と悪化がみられ、格差が生じている。原材料の仕入れごとに価格が変動し、受注の都度、売上原価の再計算を行う事務作業の時間が増加、とのコメントも目立ち、少しずつ間接部門にも原材料価格高騰の影響が出始めている。一段と進行する円安等による原油・原材料の高騰で、産業全体の採算は低水準で推移し、厳しい経営環境・経営状況が続いている。
<製造業> 一部で価格転嫁が進み好調であるも、慢性的な採算悪化に苦しむ製造業
製造業は、売上額・資金繰りDIが小幅に悪化、採算DIがわずかに悪化、業況DIがわずかに改善となった。食料品関連は、原材料高騰により採算DIが低水準で推移しているが、行動制限のない盆休みで稼働率が上がった、とのコメントがあった。繊維関連は、円安による輸入原材料高騰の影響が大きく、採算DIが直近1年間で、最大の悪化幅を示した。機械・金属関連は、3期連続で採算DIが改善。価格転嫁が進んでいる、とのコメントがあった。
<建設業> 災害関連等の需要増による業況改善に転じるが、先行き不透明感の残る建設業
建設業は、売上額・採算DIが小幅に改善、資金繰り・業況DIが大幅な改善に転じた。先月に引き続き、堅調な官公需や民間工事の受注に加え、8月に発生した大雨による災害復旧需要の増加が顕著に見られた。一方で、価格転嫁対策が追い付かないことによる採算悪化、人手不足による納期遅れが発生するなど、引き続き深刻な状況。材料が高騰し続け正確な見積もができない、売上は増えるが利益が増えないとのコメントが目立った。
<小売業> 商品の値上げ、感染症の急拡大等による、売上の悪化に苦しむ小売業
小売業は、売上DIが大幅に悪化、採算DIがわずかに改善、資金繰りDIが小幅に改善、業況DIが小幅に悪化した。食料品関連は売上額DIが大幅に悪化。値上げによる顧客の買い控えが顕著、とのコメントがあった。衣料品関連は10pt超の大幅悪化。売上の減少する時期に、コロナによる来店客減少の影響が重なった。耐久消費財関連は、エアコン特需が落ち着き、売上DIが大幅に悪化。半導体不足による供給不足も大きく影を落とす結果となった。
<サービス業>行動制限のない盆休みで活況を取り戻すも、感染急拡大の影響に苦しむサービス業
サービス業は、売上DIが小幅に改善、採算・資金繰り・業況DIが10pt超と大幅に改善した。旅館関連は、先月の大幅悪化から一転、全DIで10pt超の大幅改善。行動制限のない盆休みにより、活況を取り戻した結果となった。クリーニング関連は、原油高騰による採算の悪化と改善を繰り返しており、安定しない。理・美容は、全DIで改善傾向が続き、安定してきている。一方、事業者本人がコロナに感染し休業を余儀なくされる、とのコメントがあった。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課