小規模企業景気動向調査
令和4年10月期調査
~深刻な原油・原材料費や物価等の高騰による、採算・資金繰り悪化に苦しむ小規模企業景況~
2022年11月25日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2022年10月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 深刻な原油・原材料費や物価等の高騰による、採算・資金繰り悪化に苦しむ小規模企業景況
10月期の産業全体の業況は、前期と比べ売上額DIがわずかに改善したものの、採算・業況DIが横ばいで推移し、資金繰りがわずかに悪化に転じた。新型コロナウイルスの水際対策の大幅緩和や全国旅行支援等により、観光業を中心にサービス業は売上DIが大幅に改善。一方、全業種で価格転嫁が進まず、コスト高で利益が見込めない、とのコメントが目立つ。また一部の業種で資金繰りにも影響が出始めている。
<製造業> 改善傾向にあるものの、原材料費高騰等により資金繰りに影響が出始めた製造業
製造業は、全DIが改善した。食料品関連は、採算DIが低水準で推移し続けており、売上増加も原材料費の高騰で利益が残らない、とのコメントが多い。繊維関連は、冬物衣料の需要と、旅行等による外出機会の増加により、売上額・採算DIともに大幅に改善した。機械・金属関連は、2期連続で資金繰りが悪化。受注はあるが、資材等の入荷遅れが売上の停滞を招き、原材料費高騰で採算が悪化し、資金繰りに悪影響が出ている。
<建設業> 深刻な人手不足による売上の停滞や資材高騰により、採算のとれない建設業
建設業は、採算DIが大幅に悪化、売上額・資金繰り・業況DIが小幅に悪化し、全DIが悪化に転じた。歯止めのきかない建設資材の高騰に価格転嫁が追いついかず、採算が悪化。慢性的な人手不足から思うように業績が伸びない、というコメントが多かった。一方、公共事業や災害復旧工事、冬場前の工事需要増加が業界を牽引し、以前に比べ資材の入荷や、納期遅れ等は改善されてきたというコメントも見られた。
<小売業> 仕入値の高騰と消費者の購買意欲の鈍化から、資金繰りに苦慮する小売業
小売業は、売上額・資金繰りDIが小幅に悪化し、採算・業況DIは横ばいで推移。衣料品関連は、売上額DIがわずかに悪化したが、昨年度同月と比較すると2桁pt超改善。食料品関連は採算DIが低水準で推移。特に資金繰りDIが直近1年間で最低の水準となった。売上は安定してきたが採算が低水準で停滞し、資金繰りにも影響を及ぼし始めた。耐久消費財関連は、資金繰り・採算DIが大幅に悪化し、直近1年間で最も悪化。物価高による消費の冷え込みや、半導体不足からの納期長期化と課題が多い。
<サービス業>観光客と外出需要の増加から、3期連続で改善が続くサービス業
サービス業は、全DIが改善し、特に売上額DIが大幅に改善した。旅館関連は、全DIが大幅改善、売上額DIは20pt近く上昇。訪日客の増加や全国旅行支援の効果が顕著に表れた。クリーニング関連は、売上額DIが大幅に改善も、3期連続で改善していた資金繰りDIが悪化に転じた。エネルギー価格高騰による固定費の上昇が資金繰りに影響を及ぼし始めている。理・美容は、売上額DIがわずかに改善するが、資金繰りDIが小幅に悪化。来客数がコロナ前水準まで戻らず、諸経費の高騰など悩みがつきない。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課