小規模企業景気動向調査
令和4年11月期調査
~売上額は増加するも、コスト高から採算・資金繰りが低水準で推移する小規模企業景況~
2022年12月23日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2022年11月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> 売上額は増加するも、コスト高から採算・資金繰りが低水準で推移する小規模企業景況
11月期の産業全体の業況は、前期と比べ売上額・採算・資金繰りDIがわずかに改善したが、業況DIは若干の悪化に転じた。前月に続き人流の回復傾向を受け、売上額DIが改善した業種も多かった。その一方で、コスト高の問題は価格転嫁が進んでおらず解決の目途が立っていない。資金繰りがうまくいかず、廃業を考えているとのコメントなど、景気回復の兆しが見えないことを不安に思うコメントが目立った。
<製造業> 売上増加で、明るい兆しが見えるも、採算性の悪化から抜け出せない製造業
製造業は、直近1年間で初めて売上額DIがプラスに転じ、採算・資金繰りDIが小幅に改善した。食料品関連は、年末のイベント需要が重なり、売上額DIが5期連続で改善している。繊維関連は、採算・資金繰りDIが大幅に改善した。旅館関係の取引先をもつ事業者が好調である、とのコメントがあった。機械・金属関連は、売上額DIが直近1年間で最も改善し、資金繰り・採算DIも大幅に改善した。年末にむけて高単価の受注が伸びている。
<建設業> 受注が好調であるも、原油・原材料費高の影響から利益の出ない建設業
建設業は、全DIが小幅に改善し、売上額DIはプラス水準となり、前年同月比2桁pt超の改善となった。公共、民間ともに安定した受注があり、資材の納品サイクルが改善され着工が進むなど、業界を取り巻く状況は上向きつつある。その一方で、資材や燃料の仕入価格上昇に対し価格転嫁が進まず、採算・資金繰りDIが低水準で推移し、利益の出ない経営状況に陥っている。
<小売業> 消費の冷え込みに採算性悪化と、深刻な状況にある小売業
小売業は、売上額DIがわずかに悪化、採算・資金繰りDIが小幅に悪化、業況DIが大幅に悪化した。特に採算・資金繰りDIは直近1年間で最も悪化した。円安による物価高が、消費の停滞に大きく影響し始めた。衣料品関連や耐久消費財関連は、全DIが悪化した。消費順位が低い買回り品は、物価高が売上に影響している、とのコメントがあった。食料品関連は採算DIが直近1年間で最も低い数値となった。小売業全体が物価高とコロナ第8波による消費の冷え込みで売上が低下し、さらにはコスト高の影響から採算性が悪化する深刻な状況である
<サービス業>旅館関連が全体を牽引するも、業種により効果が限定的であるサービス業
サービス業は、採算DIがわずかに悪化に転じたが、売上額・業況DIが直近1年間で最も改善した。旅館関連は業況DIが小幅に改善し、全国旅行支援の実施などがサービス業全体を牽引している。その一方で、クリーニング関連は、全DIが悪化した。物価高による消費の冷え込みや、コスト増で利益が確保できない、といったコメントが多い。理・美容は、前月からDI値にほぼ変動がなく、比較的安定している。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課