小規模企業景気動向調査
令和5年度10月期調査
~終わりの見えないコスト高騰に価格転嫁が追いつかない小規模企業景況~
2023年12月15日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2023年10月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
終わりの見えないコスト高騰に価格転嫁が追いつかない小規模企業景況
10月期の産業全体の景況は、売上額・採算・業況DIが小幅に改善、資金繰りDIが大幅に改善し、全DIが改善した。業種により異なるものの、価格転嫁は進んでいるが、コスト上昇の勢いに追いつかず、利益は変わらないとのコメントが見られた。外出機会の増加や、インバウンド需要は伸びを見せており、業況好転の兆しがみられる中で、賃金引き上げや、インボイス対応、人手不足対策に苦慮する事業者は多い。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
取扱製品によって受注量が変動し、業況の分かれる製造業
製造業は、売上額・資金繰りDIが小幅に改善、採算・業況DIが大幅に改善した。円安の影響から、取り扱い製品によって受注量に差が生じ始めている。食料品関連は、採算・業況DIが大幅に改善した一方で、売上額DIが小幅に悪化。価格転嫁において、自社と取引先との価格転嫁のタイミングがあわず、利益を圧迫している、とのコメントが見られた。繊維関連は、売上額・資金繰りDIが小幅に改善、業況DIが大幅に改善した。機械・金属関連は、全DIが改善し、売上額・採算・業況DIが大幅に改善した。
<建設業>
公共事業の受注が増加するも、人手不足対策に苦慮する建設業
建設業は、売上額DIが小幅に改善し、資金繰り・業況DIが大幅に改善した。公共事業を中心として受注は増加傾向となったが、労働力不足の影響は深刻で、工期の延長・延期等の対応をせざるをえない状況である、とのコメントが目立った。人材確保の手段として、外国人雇用を検討する事業者も多いが、受け入れのための環境整備や、雇用後の定着が難しく、苦慮している状況である。また、人材不足の中でインボイス対応による事務量の増加を懸念している、とのコメントも見られた。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
消費マインドの低下と仕入れ値高騰の板挟みとなる小売業
小売業は、採算・業況DIが小幅に改善、また資金繰りDIが大幅に改善。業界全体として、価格転嫁は進みつつあるが、買い上げ点数の減少等、消費マインド低下による買い控え傾向が強まっている。衣料品関連は、季節の変わり目での需要から、採算・資金繰り・業況DIが大幅に改善した。食料品関連は、資金繰りDIが小幅に改善し、採算・業況DIがわずかに悪化。仕入れ高騰分の全てを価格転嫁できずに利益が圧迫されている、とのコメントが見られた。耐久消費財関連は、採算・資金繰り・業況DIが小幅に改善し、売上額DIが小幅に悪化。高額な耐久消費財への買い控えが続いている。
<サービス業(旅費、クリーニング、理・美容)>
コロナ明け需要で売上額DIが安定し始めたサービス業
サービス業は、売上額・資金繰りDIが小幅に改善し、採算DIが大幅に改善した。旅館関連は、資金繰りDIが小幅に改善、採算DIが大幅に改善した。インバウンド需要の取り込みもあり売上額DIは安定し、価格転嫁も進んでいる。クリーニング関連は、夏物のクリーニング需要から全DIが改善。特に売上額・採算・資金繰りDIが大幅に改善した。コロナ前の水準に戻った、とのコメントが見られた。理・美容関連は、全DIが改善し、特に採算DIが大幅に改善した。来店頻度が上がり始めた、とのコメントもあった。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課