小規模企業景気動向調査
令和5年度11月期調査
~行楽シーズンや省エネ需要の伸びから、明るい兆しの見え始めた小規模企業景況~
2023年12月27日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2023年11月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
行楽シーズンや省エネ需要の伸びから、明るい兆しの見え始めた小規模企業景況
11月期の産業全体の景況は、全DIが小幅に改善した。全国的に異例の暑さが続いた結果、行楽シーズンが長期化し、小売業・サービス業を中心に需要が活発化した。人手不足やコスト高騰は続いている一方で、消費者のコスト高への意識の高まりから、省エネ関連の需要が増加している、とのコメントがあった。依然として、コスト高やゼロゼロ融資の返済に苦慮する事業者はいるものの、明るい兆しが見え始めている。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
年末需要や生産拠点の国内回帰で需要が増加傾向の製造業
製造業は、全DIが改善し、売上額・採算DIが小幅に改善、資金繰りDIが大幅に改善した。食料品関連は、年末商戦に向け受注が増加傾向にあり、全DIが改善し、特に採算・資金繰りDIが大幅に改善した。繊維関連は、売上額・採算DIがわずかに改善、資金繰り・業況DIがわずかに悪化。生糸等の原材料費が高騰する等、コスト高が続く。機械・金属関連は、全DIが改善し、特に売上額・資金繰りDIが大幅に改善。生産拠点の国内回帰により受注件数を伸ばす事業者がある、とのコメントが見られた。
<建設業>
公共事業・民間事業共に受注好調も、人手不足やインボイス対応に苦慮する建設業
建設業は、全DIが大幅に改善した。採算DIにおいては2桁ポイントに迫る改善となった。降雪前の公共事業の受注がピークを迎え始め、民間工事では電気・ガス代高騰へ対応するために、省エネ補助金を活用したリフォーム需要が増加した。一方、現在の課題として、慢性的な人手不足に加え、インボイス対応への事務作業の増加を挙げる事業者も増えている。インボイス登録の有無で、下請先との価格設定の調整等に時間が割かれるため、発注先を見直す事業者もある、とのコメントが見られた。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
外出機会の増加で、全DIが直近1年で最も高まった小売業
小売業は、全DIが改善し、中でも、売上額・業況DIが大幅に改善した。異例の夏日が続き、秋の行楽シーズンが長期化したことで、外出機会が増加し、直近1年で全DIが最も高い数値を示した。衣料品関連は、売上額・業況DIが大幅に改善した一方で、資金繰りDIが小幅に悪化。異例の暑さで秋物の動きは鈍かったが、急激な気温低下と共に冬物衣料の需要が増加した。食料品関連は、外出に伴う消費の増加から売上額・資金繰りDIが小幅に改善し、採算・業況DIが大幅に改善した。耐久消費財関連は、売上額・資金繰り・業況DIが大幅に改善。省エネ関連の消費財が伸びを見せている。
<サービス業(旅費、クリーニング、理・美容)>
好調な旅館関連が、全体を牽引するサービス業
サービス業は、資金繰り・業況DIがわずかに改善し、採算DIが小幅に改善。旅館関連は、国内外の観光需要により、売上額・採算・資金繰りDIが小幅に改善した。採算DIは全業種中、唯一プラスで推移している。クリーニング関連は、業況DIが小幅に改善した一方で、売上額DIが小幅に悪化。需要の減退期ではあるが、売上額DIはプラスを維持しており、業況は上向きである。理・美容関連は、採算DIが小幅に改善した一方で、業況DIがわずかに悪化。サービス等で他店との差別化を図る事業者が増えている。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課