小規模企業景気動向調査
令和6年3月期調査
~全産業で売上額DIが好転するも、物価高騰等の厳しい経営環境に苦慮する小規模企業景況~
2024年5月13日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2024年3月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
全産業で売上額DIが好転するも、物価高騰等の厳しい経営環境に苦慮する小規模企業景況
3月期の産業全体の景況は、売上額DIを中心に、全DIが上昇した。年度末需要の高まりや、新生活に向けた人流の活発化から、全業種で売上額DIがプラス値へと上昇した。売上額が改善する中で、採算性の改善は全事業者において目下の課題である。しかし、顧客離れを恐れて、原材料エネルギーや物流コスト等の値上げ分すら価格転嫁ができていない事業者も多く、物価高騰における経営改善に苦慮している。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
生産ラインの停止や不正問題等の影響が色濃い製造業
製造業は、売上額・資金繰りDIが小幅に上昇した。 年度末によるイベント需要から、受注は増加傾向であった。食料品関連では、価格転嫁の影響により売上額は増加傾向であるが、依然として仕入れ価格の上昇は続いている。繊維工業関連は、生産ラインの稼働が止まっていた工場もあり、全業種を通じて唯一、売上額DIがマイナス値であった。機械金属関連は、元請けより自動車関連の受注が減少したことで、売上や採算に影響が出ている事業者が増えている。
<建設業>
駆け込み需要の増加や、暖冬によるエネルギーコストの減少等、好調傾向な建設業
建設業は、採算・業況DIが小幅に上昇、売上額DIは大幅に上昇した。 年度末の駆け込み需要により、受注件数が増加したことに加え、暖冬が好材料となり、水道光熱費等のコストが削減できた事業者も多く、資金繰りDIを除く全てのDIが直近1年で最も高い数値となった。一方で、災害特需は続いているが、利益率が低いことから、資金繰りに影響が出ている事業者もある。また、大幅な経営改善に至らぬ要因について、深刻な人材不足であることや、業種として下請け企業が多く、価格転嫁が容易でないことを挙げるコメントもみられた。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
新生活需要により、全業種で売上額がプラス値となった小売業
小売業は、採算・資金繰り・業況DIが小幅に上昇し、売上額DIが大幅に上昇した。 新年度に向けた生活用品等の需要が高まり、全業種で売上額DIが大幅に上昇。衣料関連は、値上げが消費者に浸透し、採算面は安定し始めたが、気候変動等による季節的な需要予測が立て辛くなっている。耐久消費財関連では、自動車の生産調整により、消費者ニーズがあっても販売できなかったケースもあり、機会ロスが発生している。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
旅館業を中心に、全業種で全DIが上昇したサービス業
サービス業は、売上額・資金繰り・業況DIが小幅に上昇、採算DIが大幅に上昇した。 インバウンド需要は堅調で、例年以上の盛り上がりを見せており、国内でも北陸応援割や復興作業等での宿泊利用者が増加し、旅館関連が業種全体を牽引している。クリーニング関連および、理・美容関連は、年度末の式典等がコロナ禍以前の規模で開催されるようになり、需要が伸びつつある。一方で、地域の人口減少等により、需要が頭打ちとなっていることから廃業を検討する事業者も増えている、とのコメントもみられた。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課