小規模企業景気動向調査
令和6年4月期調査
~コロナ禍を脱した経済の中で、業種により明暗の分かれる小規模企業景況~~
2024年6月24日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2024年4月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
コロナ禍を脱した経済の中で、業種により明暗の分かれる小規模企業景況
4月期の産業全体の景況は、全DIが小幅に低下し、サービス業を除いた全業種で全DIが低下した。サービス業を中心としたインバウンド需要を取り込みできる業種では活況が続いているが、その他の業種では前年同月比で売上額DIが低下している。要因として、コロナ禍を脱した経済活動の中、コロナ融資の返済に加え、物価高でのコスト高騰や消費抑制、円安や賃上げ等が事業者に影響を及ぼしている。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
嗜好品等の売上額が伸び悩み、業種で景況感に偏りがある製造業
製造業は、売上額・採算・資金繰り・業況DIの全DIが小幅に低下した。 全業種にて前年同月比で売上額DIが低下し、資材高騰が採算を圧迫している。食料品関連は、菓子等嗜好品の受注が伸び悩んでいる。機械・金属関連は、価格交渉が進むも、加工賃について難航するケースが多い。また、車両生産数が低調なことから、過去最大に売上が減少している、とのコメントがある。その一方、設備投資の機運が高まっており受注が増加している、とのコメントもあり、業界により景況感が二極化している。
<建設業>
大口工事の減少や、災害復旧工事等の局地的な発注が多く、先行き不透明な建設業
建設業は、売上額・採算・業況DIは大幅に低下、資金繰りDIはわずかに低下した。 公共事業を主に請け負う事業者では、年度初めにより受注は少ないが、今後の受注増加に期待が高まっている。しかし、能登地震等の災害復旧工事が多く、その他地域の公共工事が減少している、とのコメントがあった。また、民間工事関連では、リフォーム工事需要は安定しているが、新築工事と比較すると単価が低く、新規顧客の獲得が困難で安定的な収益が見込めないことから、先行きを不安に感じる事業者が多い。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
消費マインドが生活必需品に集中する小売業
小売業は、全DIが低下。特に売上額DIは大幅に低下、採算DIは小幅に低下した。 入学シーズンや新生活シーズンの季節的需要により、月前半をメインとして消費に動きがみられたことで売上額DIはプラスでとどまったが、必要最低限のもののみを購入する消費マインドが見られる、とのコメントが目立つ。衣料品関連は、コロナ禍を経て買い物習慣に変化が起き、EC市場が中心となり始めている、とのコメントがあった。耐久消費財関連では、省エネや猛暑への備えとして、エアコンの売上が伸びている。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
旅館業を中心に、全業種で唯一業況がプラス値で推移し、活況の続くサービス業
サービス業は、売上額DIは小幅に上昇したが、資金繰りDIは小幅に低下した。 旅館関連では、インバウンド需要はアジア圏が中心だが、ヨーロッパ圏の客数も増加傾向。コスト高から客室価格を見直す事業者は多く、売上額は増加する一方、顧客のキャッシュレス化が進むことで資金繰りに影響がでている事業者もある。クリーニング関連は、入学式等の行事や、衣替えの影響から一年の中でも売上が伸びる時期だが、価格転嫁が進まずコスト増加もしており、採算および資金繰りが厳しい状況である。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課