小規模企業景気動向調査
令和6年5月期調査
~コロナ禍からの回復ペースを上回るコスト高により、先行きが危ぶまれる小規模企業景況~
2024年7月12日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2024年5月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
コロナ禍からの回復ペースを上回るコスト高により、先行きが危ぶまれる小規模企業景況
5月期の産業全体の景況は、全DIが小幅に低下した。業種別にみると、ゴールデンウィークやインバウンド需要の拡大から一部の製造業・サービス業のDIは上昇した。前年同月比では売上額以外のDIは上昇しているが、前月から継続して全DIが低下傾向にあり、今後の景況悪化が懸念される。要因として、円安等によるコスト高の長期化から、これまで価格転嫁をできていた事業者も継続した対応が困難な状況になっている。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
受注回復による売上増を、利益増につなげたい製造業
製造業は、売上額・採算DIがわずかに上昇し、資金繰り・業況DIは小幅に低下した。 食料品関連は、全DIが低下した。ゴールデンウィークの影響で、売上額DIはプラス値を維持しているものの、コストが上昇し続ける中、価格転嫁に限界を感じている事業者が出てきている状況。機械・金属、繊維工業関連は共に、受注が回復傾向であり、売上額・採算DIが上昇した。しかし、今後大きく売上額・採算を伸ばすには、人手不足の解消が必須であり、人材確保に苦慮している事業者が多い。
<建設業>
コスト高等の既存課題に加え、2024年問題という新たな課題に直面する建設業
建設業は、全DIが低下した。特に売上額DIは2桁ptの大幅な低下となった。 公共工事・民間工事ともに、都市部以外では減少傾向のため、売上が低下傾向にある一方で、受注はあるものの、人手不足・資材入荷待ちに伴う工期遅れや、コスト高に係る採算性の悪化により、思うように利益をあげられていない事業者も多い。また、2024年問題への対応から人件費が高騰してきており、様々な課題が山積している状況が改めて浮き彫りになった。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
取扱商品によって、消費者の動向に差が生まれてきた小売業
小売業は、全DIが小幅に低下した。 衣料品・耐久消費財関連は共に、全DIが低下した。食料品等の日用品が値上がりする中、どちらも買い控えが発生している状況。特に、単価が高い耐久消費財関連については、節約志向が顕著であり、全DIが大幅に低下した。食料品関連は売上額・採算・資金繰りDIは不変であったが、業況DIはわずかに低下しており、仕入れ価格が上昇し続けている状況を不安視するコメントが多かった。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
旅館関連がけん引するも、価格転嫁に苦しむサービス業
サービス業は、資金繰りDIがわずかに上昇したが、その他のDIは低下した。 旅館関連は全業種で唯一、全DIがプラス値であり、新型コロナが5類に移行してから初めてのゴールデンウィークや、インバウンド需要の影響が大きかった。クリーニング関連は、旅館関連の好況に比例して売上が伸びたが、価格転嫁は進んでおらず、採算が厳しい状況に変化はない。理・美容関連についても、固定客が多く、売上は比較的安定しているが、コスト高により採算は悪化している。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課