小規模企業景気動向調査
令和6年7月期調査
~依然として続くコスト高により、後退傾向が加速している小規模企業景況~
2024年10月30日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2024年7月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
前月から一転して改善が見られるも、現状維持が続く小規模企業景況
7月期の産業全体の景況は、採算DIがわずかに上昇、売上額・資金繰り・業況DIは小幅に上昇した。主に、建設業におけるDIの大幅な上昇が全体のDIをけん引した。その他の業種のDIについては、全体的に現状維持といった状況であった。一部の業種において、コスト高に落ち着きが見られ、徐々に価格転嫁を進められていることが、DI値の低下傾向が止まった一因としてあげられる。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
賃上げ機運の高まりへの対応が求められる製造業
製造業は、資金繰りDIが大幅に上昇し、その他のDIは変化がなかった。 食料品関連は、採算・資金繰り・業況DIが上昇した。繊維工業、機械・金属関連は、採算DIが小幅に低下し、食料品関連と比較すると、価格転嫁しづらい状況であることが窺えた。他業種に比べ、製造業全体で最低賃金の引上げにより、収益性が悪化することを不安視するコメントが多くあり、より一層、価格転嫁の重要性が高まってくると思われる。
<建設業>
悪天候・人手不足等の厳しい環境の中で、効率的な利益確保を目指す建設業
建設業は、売上額・業況DIが2桁ptの大幅な上昇となり、採算・資金繰りDIは小幅に上昇した。全DIが今年の4月頃と同程度の水準まで回復した。 要因としては、資材等の納期の安定化や、公共工事の受注が活発化し始めたことから、稼働率が高い事業者が増えたことがあげられる。一方で、ゲリラ豪雨や猛暑により作業がストップし、採算が悪化しているとのコメントが複数あり、悪天候の影響が様々な業種に及んでいる状況である。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
天候の影響を最小限に抑えたい小売業
小売業は、採算・資金繰りDIがわずかに上昇し、売上額DIが小幅に低下した。 衣料品関連は、全DIが上昇した。猛暑の影響で、例年より売り上げが伸びているとのコメントがあった。食料品、耐久消費財関連は、売上額・業況DIが低下した。果物やエアコンなど、猛暑の影響により売り上げが伸びているものもあるが、物価高騰に伴う節約志向の影響が依然強い状況である。また、猛暑による外出控えや、天候不順による農作物の仕入れ量の不安定化について言及しているコメントが多かった。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
コスト高に負けず、インバウンド等の波に乗りたいサービス業>
サービス業は、全DIに変化がなかった。 旅館関連は全DIが上昇した。インバウンド需要の増加に加え、新型コロナの5類移行から1年が経過したことから、夏祭りなどのイベントや、学生の合宿などが再開し盛況であるとのコメントが多かった。クリーニング、理・美容関連については、価格転嫁を実施した結果、顧客の来店スパンが長くなったとのコメントが複数あり、顧客に納得してもらう形での価格転嫁の難しさが浮き彫りとなった。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課