小規模企業景気動向調査
令和6年8月期調査
~現状維持が続く中、賃上げへの対応が求められる小規模企業景況~
2024年11月5日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2024年8月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
現状維持が続く中、賃上げへの対応が求められる小規模企業景況
8月期の産業全体の景況は、売上額DIが小幅に低下、資金繰りDIがわずかに上昇し、採算DIは変化がなかった。全産業において、仕入れ価格や光熱費のコスト高が継続している中、猛暑による外出減や自然災害の影響が大きかった産業もあり、事業者にとって苦しい状況が続いている。また、10月に最低賃金の引き上げが控えていることから、業種を問わず、今後の業況悪化を懸念する声が多かった。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
回復基調から小幅な悪化に転じた製造業
製造業は、売上額DIが小幅に低下し、採算・業況DIはわずかに低下した。 全業種において売上額DIが低下した。採算DIについても上昇した業種はなく、売上および利益の確保に苦戦している状況である。また、食料品関連において、原料米の値上げが予定されており、今後の収益悪化を懸念するコメントがあった。機械・金属関連は、一部業種において、海外に依存していた製造を国内に回帰させる動きがあり、今後の需要回復に期待が持たれる。
<建設業>
堅調な需要の中、適切な価格交渉の重要性が増している建設業
建設業は、売上額DIが大幅に低下し、採算DIはわずかに上昇、資金繰りDIはわずかに低下した。 需要は比較的堅調だが、建設コストの長期的な高止まりから、取引先が価格面について慎重に判断するようになり、利益確保に苦戦しているとのコメントがあった。また、人手不足解消のため、外国人技能実習生の受け入れを検討している事業者もいるが、事務手続きの煩雑さや、人材定着の難しさがハードルになっている状況である。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
回復基調の中、業種による差が明らかになってきた小売業
小売業は、売上額・資金繰りDIが小幅に上昇し、採算DIがわずかに上昇した。 食料品・耐久消費財関連は、全DIが上昇した。食料品関連については、イベントの再開や帰省シーズンの人流増加が要因としてあげられる。耐久消費財については、昨年と同程度の記録的な猛暑の影響により、エアコンの売り上げが伸びたとのコメントが多かった。対して衣料品関連は、売上額・業況DIが低下した。猛暑による外出控えが売上等に大きく影響した。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
自然災害の影響が大きかったサービス業>
サービス業は、売上額DIが小幅に低下し、資金繰りDIはわずかに上昇した。 旅館関連は、売上額DIが大幅に低下した。台風10号、南海トラフ地震臨時情報の発表の影響を受けて、一部地域において宿泊のキャンセルが相次ぎ、繁忙期に水を差す結果となった。クリーニング関連は、全DIが上昇した。イベントや冠婚葬祭の需要が回復したことが要因としてあげられる。理・美容関連は、上昇したDIはなく、低価格帯のカット専門店との価格競争に苦慮しているとのコメントがあった。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課