小規模企業景気動向調査
令和6年10月期調査
~最低賃金引上げの影響が出始めた小規模企業景況~
2025年1月8日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2024年10月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
最低賃金引上げの影響が出始めた小規模企業景況
10月期の産業全体の景況は、採算・資金繰りDIがわずかに低下し、業況DIは小幅に低下した。多くの業種において、徐々にではあるが価格転嫁を進められていることが、売上額DIの低下が抑えられた要因としてあげられる。他方で、最低賃金の引上げにより、パート従業員の内、配偶者控除の範囲内で就業している方々の労働時間が減少することで、人手不足が深刻化することを懸念するコメントが複数の業種で見られた。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
最低賃金引上げの影響が大きい製造業
製造業は、採算・業況DIがわずかに低下し、資金繰りDIは小幅に低下した。 食料品・繊維・機械・金属関連の全業種において、資金繰り・業況DIが低下した。製造業は、他業種と比較して、最低賃金の改定に伴う人件費の増加に関して言及するコメントが最も多く、影響の大きさが窺える。賃上げの傾向は、今後も継続する可能性が高いことから、業務効率化や価格交渉への取り組みの重要性がより一層高まっている。
<建設業>
比較的堅調な受注に下支えされているものの、業況DIが悪化した建設業
建設業は、採算・資金繰りDIがわずかに低下し、業況DIは小幅に低下した。 前月と同様に、受注量は堅調だが、資材等の高騰や最低賃金の引上げによって採算が悪化しているとのコメントが多かった。長期的な課題である人手不足については、労働環境の見直しや賃金引上げなどを実施しても、人材が確保できない厳しい状況である。この状況を改善するには、他業種と比較して遅れているITを活用した業務効率化に、業界全体で取り組むことが必要不可欠であるとのコメントもあった。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
高まる節約志向の中で、売上額DIは現状を維持した小売業
小売業は、採算・資金繰り・業況DIが小幅に低下した。 食料品関連は、全DIが低下した。10月からの価格改定により値上がりした商品が多く、買い控えが発生した。また、米不足は解消に向かっているが、仕入れ単価は変わらず高止まりしている状況である。衣料品関連は、売上額DIがわずかに上昇した。季節の切り替わりから売上が伸びた事業者が多かった。耐久消費財関連は、消費者の節約意識の影響を強く受けているが、大手にはないアフターサービス等を実施して売上を維持している。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
一部の需要は回復するも、足踏み状態が続くサービス業>
サービス業は、売上額・業況DIが小幅に低下し、資金繰りDIはわずかに低下した。採算DIはわずかに上昇した。 旅館関連は、行楽シーズンによる好況から、売上額・採算DIが上昇した。クリーニング関連は、個人客のクリーニング需要の落ち込みから、前月に引き続き全DIが低下した。理・美容関連は、売上額・業況DIが低下した。節約志向が高まる中、固定客に来店頻度・顧客単価を維持してもらうための取り組みが重要である。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課