小規模企業景気動向調査
令和7年3月期調査
~前月からの持ち直しを見せるも、先行きが不透明な小規模企業景況~
2025年7月2日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2025年3月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
前月からの持ち直しを見せるも、先行きが不透明な小規模企業景況
3月期の産業全体の景況は、売上額・業況DIが小幅に上昇し、採算・資金繰りDIはわずかに上昇した。前年同月比では全てのDIが下回っており、景気回復の兆しはあるもののその歩みは緩やかであり、本格的な回復にはなお時間を要する状況である。季節的要因や4月以降の値上げを見越した駆け込み需要などから売上が増加した業種がある一方で、米国の関税引き上げによる影響を懸念するコメントも複数寄せられた。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
コスト高に加え、米国の関税引き上げの影響が懸念される製造業
製造業は、売上額・業況DIがわずかに低下し、採算・資金繰りDIは小幅に低下した。食料品関連は、売上額DIのみ小幅に上昇した。原材料価格の上昇や節約志向もあり、採算が悪化傾向であるとのコメントが目立つ。機械・金属関連は、全てのDIが低下したなか、繊維関連は、全てのDIが上昇した。車両部品製造業など、海外輸出製品の製造業においては、米国の関税引き上げにより先行きが不透明であり、減産傾向となっているとのコメントも見受けられた。
<建設業>
価格転嫁が進むものの、人手不足により業況回復への道のりは遠い建設業
建設業は、資金繰りDIがわずかに低下、売上額・採算DIはわずかに低下し、業況DIは不変であった。仕入価格の上昇に対しては、価格転嫁ができているとのコメントがある一方で、支払いと入金サイクルのギャップによる資金繰りに苦慮しているとのコメントも見受けられた。また、年度末需要により受注量が増えている事業者がいるなかで、労働力不足が浮き彫りになっている。建設コストの上昇に伴い従業員の新規雇用が困難をきわめており、生産性向上や業務効率化を検討しているとのコメントも一部あった。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
新生活需要や駆け込み需要により業況改善を見せた小売業
小売業は、売上額・採算DIが大幅に上昇、採算・資金繰りDIは小幅に上昇した。業種別DIにおいても、全業種の全てのDIが上昇する結果となった。新生活の準備や季節の変わり目による需要や、4月以降に値上げされる商品への駆け込み需要が各DI上昇の要因として挙げられる。仕入価格上昇に伴う価格転嫁が進む業種もあるなかで、節約志向による買い控えが懸念され、移動販売やオンライン対応といった消費ニーズの変化への対応が求められている。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
全業種で売上額がプラス値となったサービス業
サービス業は、売上額・業況DIが大幅に上昇、採算・資金繰りDIは小幅に上昇した。サービス業についても、小売業と同様に全業種の全てのDIが上昇する結果となった。春休みや行楽、卒業・入学シーズンということもあり、旅館業や理・美容業において業況が好転した。クリーニング業については、気温の変動により例年よりも需要に遅れが生じている事業者もある。小売業と同様に消費者の節約志向が高まるなか、季節的ではなく、継続的に売上を確保できるサービスの確立に取り組む事業者が増えている。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課