小規模企業景気動向調査
令和7年5月期調査
~ 物価高に苦しみ廃業懸念が強まる中、支援を求める声が広がる小規模企業景況 ~
2025年7月2日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2025年5月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>
物価高に苦しみ廃業懸念が強まる中、支援を求める声が広がる小規模企業景況
5月期の産業全体の景況は、売上額DIがわずかに低下し、採算・資金繰り・業況DIはわずかに上昇した。売上額DI以外は緩やかな回復を見せたが、前年ベースではマイナスで推移しており、回復基調にはなお時間を要する。物価高騰をはじめとする経営上の課題により、廃業検討の声も多くあることから、国や自治体による抜本的な小規模企業支援を求める。
<製造業(食料品、繊維、機械・金属)>
外部環境に対する不安と挑戦が交錯する製造業
製造業は、売上額DIが小幅に上昇、採算・資金繰りDIはわずかに上昇し、業況DIは不変であった。食料品関連は、依然として原材料費やエネルギーコスト高に苦しむ声が多い。繊維関連は、季節要因により受注が伸び悩み、売上や採算が悪化した。機械・金属関連は、前月比での改善は見られたが、関税政策による先行き不安の声は続いている。一方で、一部事業所では新分野進出に取り組むなど、前向きな姿勢も確認された。
<建設業>
前年同月からは改善が見られるも、依然として人材確保が急務な建設業
建設業は、売上額がわずかに低下、資金繰り・業況DIはわずかに上昇し、採算DIは不変であった。前年同月比では、全てのDIが上昇。コロナ禍の影響が落ち着いたことによる受注件数の増加が一部で報告されたが、慢性的な人手不足に伴い外注への依存度が高まり、採算が取れない状況が続いている。廃業する事業所も散見される中、企業存続の為、人材確保や育成等の取り組みが急がれる。
<小売業(衣料品、食料品、耐久消費財)>
全業種のうち、唯一全DIがマイナス値となった小売業
小売業は、売上額DIが小幅に低下、資金繰り・業況DIはわずかに上昇し、採算DIは不変であった。衣料品関連・食料品関連ともに物価高騰による買い控えの影響が目立つ結果となった。特に衣料品関連は、売上高DIが前年同月比で約10ポイント低下、食料品関連は米の不足や高騰の影響に関する声も多く、前月からマイナス推移となった。耐久消費財関連は、仕入価格の上昇に対し価格転嫁が進まず、採算に影響があるとの声も聞かれた。
<サービス業(旅館、クリーニング、理・美容)>
業種間格差と、地方の苦戦が続くサービス業
サービス業は、売上額DIがわずかに低下、採算DIは小幅に上昇し、資金繰り・業況DIは不変であった。売上額について、業界としては前年ベースで大幅に低下したが、旅館関連の売上にけん引され、5月DIとしてはプラスを維持。クリーニング関連は、仕入や水道・電気料金高騰の影響から、肯定的な声は少ない。理・美容関連は、引き続き地方での人口や利用頻度の減少から、売上が伸び悩んでおり、廃業を検討する事業所も多い。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課