小規模企業景気動向調査
令和5年度5月期調査
~コスト高の課題は残るもサービス業の好影響を受け、持ち直しをみせる小規模企業景況~
2023年6月26日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2023年5月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体> コスト高の課題は残るもサービス業の好影響を受け、持ち直しをみせる小規模企業景況
5月期の産業全体の業況は、採算・業況DIが小幅に改善し、資金繰りDIは大幅に改善した。行動制限のないゴールデンウィークやインバウンド需要の拡大から観光業の好材料が各業種に波及した。また、資材価格や生活必需品の値上げに対し、価格転嫁や新規の販路開拓・事業展開等により柔軟に対応する事業者が増えつつある。人手不足等の課題は多く残るが、持ち直しの動きが広がった。
<製造業> コロナ禍から持ち直しつつも、コスト高騰が障害となっている製造業
製造業は、採算・資金繰りDIが小幅に改善、業況DIは大幅に改善した。食料品関連は、資金繰りDIが大幅に改善、業況DIは小幅に改善した。観光関連の需要は伸びる一方で、巣ごもり需要の減少や、物価高騰により個人消費は冷えこむ需要格差が生じている。繊維関連は、採算・業況DIが改善し、資金繰りDIは小幅に悪化した。受注は安定し始めたが、コスト高や人手不足の影響は未だ大きい。機械・金属関連は、全DIが改善、特に業況DIが大幅に改善した。コロナ禍に比べると受注は回復しつつある。
<建設業> 受注は戻り始めるも、積もる課題に先行きが不透明な建設業
建設業は、売上額・採算・資金繰りDIが改善し、特に資金繰りDIは大幅に改善したが、業況DIはわずかに悪化した。コロナ禍に比べると受注も増え、資材の入荷遅れ等も解消され始めたが、慢性的な人手不足やコスト高に加え、公共事業の動きの鈍さから、先行きの不透明さに不安を感じる事業者が多い。また、働き方改革による賃上げや、労働時間の制約等、人材への課題が不安材料となり足踏み状態となっている。
<小売業> 価格転嫁は進むも、消費者の節約志向の高まりに影響を受ける小売業
小売業は、売上額・業況DIは小幅に改善し、採算・資金繰りDIは大幅に改善した。 価格転嫁により売上額DIは伸びているが、日用品等では定番商品と比較し、安価な代替品が売上を伸ばしており、消費者の節約志向が進んでいる、とのコメントが見られた。衣料品関連は、外出機会増加の効果が顕著であり、全DIが改善、特に採算・資金繰り・業況DIは大幅に改善した。食料品関連は、全DIが改善し、中でも採算DIが大幅に改善した。耐久消費財関連は、納品遅れなども解消され始めたことで、全DIが改善し、特に資金繰りDIは大幅に改善した。
<サービス業>人手不足やコスト高の問題は抱えつつも、回復傾向が続くサービス業
サービス業は、売上額DIは小幅に改善し、採算・資金繰り・業況DIは大幅に改善した。旅館関連は、全DIが改善したが、特に採算・資金繰りDIは大幅に改善した。ゴールデンウィークでの旅行や帰省、また訪日客の増加から業況は明るいが、人手不足から稼働率を上げられない問題は続いている。クリーニング関連は、外出機会増加による需要回復から、全DIが改善し、資金繰りDIは2桁ポイントの大幅改善となった。一方で、チェーン店の増加等により競争が激化し始めている。理・美容関連は、売上額・業況DIは小幅に改善し、採算・資金繰りDIは大幅に改善し、安定した状況が続いている。
全国商工会連合会 産業政策部 産業政策課