小規模企業景気動向調査

令和5年度6月期調査

～経済活動の正常化で改善が進むも、借入金返済や供給力に問題を抱える小規模企業景況～

2023年8月7日
全国商工会連合会

＜調査概要＞

調査対象：全国約300商工会の経営指導員
調査時点：2023年6月末
調査方法：対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式

＜産業全体＞ 経済活動の製造化で改善が進むも、借入金返済や供給力に問題を抱える小規模企業景況

　6月期の産業全体の業況は、売上DIがわずかに悪化、採算・業況DIはわずかに改善し、資金繰りDIが小幅に悪化した。経済活動の正常化を背景に、5期連続で売上DIがプラスで推移し、価格転嫁に向けた取り組みが進み、採算性も改善してきている。一方、コロナ融資の返済開始が、資金繰りの悪化に影響を及ぼしている。また、人手不足から、需要拡大に対し、供給が追い付いていない状況にある。

＜製造業＞ コスト高が続くも、受注の増加から、設備投資の動きが見られ始めた製造業　

　製造業は、採算DIがわずかに改善、売上額DI・業況DIがわずかに悪化、資金繰りDIがわずかに悪化した。食料品関連は、採算DIが5期連続で改善し、コスト高に対し、価格転嫁が進んでいる。一方、資金繰りが大幅に悪化し、収支バランスの悪化が見られる。繊維関連は、全DIが改善、一部で受注拡大のための設備投資の動きが見られる。機械・金属関連は、採算DIが悪化、引き続きコスト高の影響を受けている。全業種に共通し、受注の増加から、設備投資の動きがみられる、とのコメントが増えた。

＜建設業＞ 受注増で好調であるも、コロナ融資の返済開始が本格化し、資金繰りが厳しい建設業

　建設業は、売上額・採算・景況DIが小幅に改善、資金繰りが大幅に悪化した。原材料価格の高騰が続いているが、一般住宅やリフォーム工事を中心に受注が増加しており、業況の改善が続く。一方、他業種と異なり、入金までの期間が長いことから、本格化するコロナ融資の返済が資金繰りを圧迫している。また、一部で設備投資による生産性向上の動きが見られるも、慢性的な人手不足から供給が追い付いていない。

＜小売業＞ 概ね改善傾向を維持するも、業種により影響の異なる小売業

　小売業は、売上額DIがわずかに悪化し、採算DIが小幅に改善、資金繰り・業況DIがわずかに改善した。衣料品関連は、先月に続き全DIが改善、外出機会の増加が需要の増加につながった。食料品関連は、売上DIが大幅に悪化、物価高による消費者の節約志向により、購買頻度が減少している。耐久消費財関連は、売上DIが大幅改善し、電気代の高騰から、省エネを意識したエアコン関連の需要が伸びている。

 

＜サービス業＞好調を維持するも、人手不足や借入金返済に苦しむサービス業

　サービス業は、売上額・資金繰りDIが小幅に悪化し、採算・業況DIはわずかに悪化した。旅館関連は、売上額・資金繰りDIが大幅に悪化、売上は5月のゴールデンウィークの需要増から比較すると悪化したものの、依然として全業種の中で最も高い水準を維持している。一方、人手不足の問題から回転率が鈍いことや、借入金返済負担が重くなってきている。クリーニング関連は、一般客の利用や、イベント再開による需要増により、全DIが改善した。理・美容関連は安定してきている一方で、借入金返済の本格化により、資金繰りDIが大幅に悪化した。

 

全国商工会連合会　産業政策部　産業政策課