小規模企業景気動向調査
令和元年8月期調査
~消費税増税前の駆け込み需要があったものの、足踏み状態の小規模企業景況~
2019年10月1日
全国商工会連合会
<調査概要>
調査対象:全国約300商工会の経営指導員
調査時点:2019年8月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産業全体>◇…消費税増税前の駆け込み需要があったものの、足踏み状態の小規模企業景況…◇
8月期の小規模企業景気動向調査は、売上額DIこそわずかに改善したが、資金繰りDIがわずかに悪化、他2DIは不変であった。消費税増税まで約1カ月となり、耐久消費財を取り扱う小売業や大小問わず、建設業においては前回の引き上げ時ほどではないが、駆け込み需要が発生しているとの報告があった。一方で、事業者の税率引き上げや軽減税率制度導入に対する準備は進んでいるものの、まだまだ、対応できていない事業者も多く、キャッシュレス決済の導入も消極的との声があった。
<製造業>◇…猛暑で一部業種が好調も、貿易問題や働き方改革対応で先行き不透明な製造業…◇
製造業は業況IDこそ改善が見られたが、その他3DIは悪化した。昨年と同様、8月は猛暑日が多く、清涼飲料水や冷菓を取り扱う会社では好調さが見られた。また、大手企業の設備入替サイクルに当たった企業では、売上が堅調に推移している。一方で、米中の貿易摩擦問題は長期化の様相を呈し、電子部品製造業や金属製品製造業においては、先行きの見通せない状況が続いている。また、働き方改革は従来の製造業の在り方を制限し、一部の業種では労働者の賃上げや有休消化による労働力確保に困難を来たしているとのコメントが見られた。
<建設業> ◇…駆け込み需要で受注が増加傾向も、機会損失が発生している建設業…◇
建設業は、採算DIがわずかに改善したが、他3DIは悪化した。資金繰りDIの悪化幅は、4.5ptと大きかった。経営指導員からは、前回のような大きなものではないが、増税前の駆け込み需要で内装工事業等の職別工事業や電気工事業等の設備工事業において、受注が増えてきている。しかし、受注が増えても対応できる作業員は少なく、下請・材料費の高騰や施工エリア拡大に伴う経費増加により、収益性は低下しているとのコメントが見られた。
<小売業> ◇…猛暑や消費税増税に向けた駆け込み需要で大幅に改善した小売業…◇
小売業は、4全業種の中で唯一全DIが改善した。特に売上額DIが8.0ptと大幅に改善した。8月は猛暑が続いたことからスーパーやコンビニエンスストアでは、飲料や冷菓を中心に大きく売上が伸びた。また、消費税率引き上げに向け、エアコン等の耐久消費財の購入やトイレットペーパーや洗剤などの生活必需品に買い溜めの動きが見られている。一方、8月下旬に発表されたレジ補助金の申請受付延長に安堵感が見られるも、軽減税率制度の導入への対応はまだまだ途上であり、一部の事業者に諦観の念さえ見られる。
<サービス業> ◇…猛暑で観光関連が好調も、天候不順や経費の高騰により先行不安なサービス業…◇
サービス業は、先月から一転、業況DIと採算DIが小幅に悪化、売上額DIと資金繰りDIは先月と不変であった。8月は昨年同様、猛暑に見舞われ宿泊業や観光業で売上が伸びた。一方で、全国で相次ぐ台風や天候不順により海水浴客を中心に客足が鈍った地域もあった。また、天候不順により、食材の安定供給を妨げられ、人件費の高騰で採算の悪化が見られた。洗濯・クリーニング業では、日照不足で需要が伸びるところであるが、衣料品の消費サイクル短縮化により、業界全体で景況感が悪化しているとのコメントが寄せられた。
全国商工会連合会 政策推進部 事業環境課